定年退職する一年くらい前の7月、会社が税務調査を受けることになり
相談役が調査のために関連する社員全員と面接しました。私も会社の
一大事なので知ってることを積極的に話しました。
私が勤務していた営業所にも、広島国税局の調査官が来て帳簿類を
二日間かけて調べました。9月のことでした。
10月に、会社は修正申告をして、700万円の追加納税をしました。
そして、11月初旬に関わった者すべてに処分が示されました。
私も訓告になっていました。全社員の約1/4に何らかの処分が
下されるという前代未聞の大事件です。私の頭が沸騰しました。
なんじゃあ!こりゃあ!何が、どうなってる?だいたい、処分に
あたっては、懲罰委員会において本人の申し開きの場が与えられる
ハズだろう!少なくとも何がどのように訓告に当たる行為なのか
明示しなければ訓告の意味がないだろう!
すると、7月に行われた相談役の面接の結果が処分の軽重を決める
尺度になっているらしいということがわかってきました。
待て!待て!待て!あれは、会社が税務調査を受けるという一大事に
少しでも役に立てばいいと思って知ってることを話しただけじゃないか!
完全に、だまし討ちだろう!
それに、一番軽い訓告を受けただけでも暮れのボーナスが5%カットされます。
処分の内容と氏名の一覧表から、5%カット×人数+10%カット×人数+
15%カット×人数+20%カット×人数 の概数を計算してみると、ほぼ、
追加納税した税額くらいになるではありませんか。全社員の1/4に処分が
下されるという事態は、社員だけに責任があるハズがありません。
私は怒りを持って、まず、県の労働相談所に行き、連合岡山に行き、
岡山西税務署に行って相談をしました。少しでも役に立つ情報をくれたのは
税務署だけでした。
ところで、広島国税局はどういった内容の税務調査に入ったかというと、
解体車の売却代金のうち、法人所得として申告していないものを過去数年間に
遡って修正納付しろというものでした。これに、なぜ、全社員の約1/4が
関わっているとされたかについては、一般の人と自動車業界にいる者とでは
知識とか感覚の相違があったことが関係しています。一般の人の感覚では
自分の乗っている車に市場価値がなくなれば、処分するには費用がかかると
考えるところを、業界にいる者は、たとえ動かなくなっていても、クズ鉄としての
価値があり、その時のクズ鉄相場に見合った金額で売れると考えます。
リーマンショック直前のクズ鉄相場は、トン当たり6万8千円ほどに高騰して
ました。処分を受けた当時は、価格は落ち着いていて、トン当たり3万5千円
ぐらいだったと思います。この相場は業者間の相場なので、いくら業界にいると
言っても、個人が解体業者に売るときには何割か下がります。私の車は、
1.5トンくらいあったので、3万円で売りました。その売買の日付と
価格を相談役に話したのでした。私が私の財産を処分して対価を得ただけ
ですから、そのことで処分を受けるいわれはない話だったのです。
しかし、現職の営業マンの場合は少し違う事情があって、お客さんが前に
乗っていた車を下取りすると注文書上下取り手数料やら査定料を計上しなければ
なりません。私が営業マンをしていた頃は、1トンクラスの車の解体業者への
売り渡し価格は、1万円くらいでした。注文書に計上すると下取り手数料が
ひびいてマイナス8千円くらい。つまり、会社に下取りとして入れずに解体業者に
売って下取りなしとすれば、見かけ上の値引き額を1万8千円くらい圧縮できるため
よくこの手を使ってました。しかし、これは、下取り車の横流し行為ですから
あまりホメられたことではなかったのですけど、黙認というか半ば公然と
行われていました。
つまり、一般の人にとっては、スクラップ車は下取り費用を払って処分して
もらうもの。業界にいる者にとっては、相場の変動で高かったり安かったりは
するけれど売れば対価を得られるもの。しかも、自動車販売会社に勤めていれば
出入りの解体業者に電話一本かけるだけで会社まで引き取りに来てくれて
買い取っていってくれる。在職中に車を買い換えるときには会社から買うけれど
下取り車に市場価値があれば中古車部門に売り渡し、スクラップとしてしか
価値がなければ、解体業者に売っていたのです。
↑↑↑ 里山に置いてる物置代わりのタウンエースは、下取りとして会社に
入荷したものなので、5,000 円で買って里山まで運転して運んできて
プレートを外し、廃車処理は会社にしてもらいました。別にズルしたわけでは
なくて、会社の規定に従って中古車として買ったものです。この車を買った
ときには、クズ鉄価格が下がっていたので、この価格だったのです。
処分された1/4の社員のほとんどは、自分の車を解体業者に売っただけの
無実の人々でした。