これまた、いい映画でした。年を取ることの楽しみは、こういう映画を
楽しめるようになることなんでしょう。しかし、きちんと味わうためには
セリフを味わうことが必要条件でした。例によって、最初は英語字幕版を
観賞したので、あらすじはわかっても、繊細な味やコクが味わいきれないため
賞味期限切れのビールのようなものでした。とても精巧に作られた脚本に
基づくこの映画の場合、どんなに詳細にあらすじを知らされても、
それだけではダメなことは、英語字幕版を観ていて強く感じました。
そこで、よせばいいのに、自分で英語字幕を訳してみたのですが、10分足らずの
部分を訳すのに3時間ぐらいかかり、あとで日本語字幕版を観たら
誤訳だらけとわかりました。それに、上手ですね。どういうふうに訳すか
四苦八苦したソテツの木も、プロの日本語字幕では、あっさりと「木」と
訳してありました。さすがですねぇ。でも、あまりの意訳に、原語の
ニュアンスが違うものになっていたりもすると思うのですが、そのことに
気づくことが不可能なのはツライところですね。でも、こればっかりは、
語学力を飛躍的に高めるしかないし、それって、望むべくもないところです。
年を取ることの哀しみは、そうやって、あきらめてしまうところに
あるのですが、近年の AI の進化により「音声認識技術」が飛躍的に
向上しつつあり、次々と実用化されつつあります。
Googleは、音声文字変換&音検知通知アプリ、「Introducing Live Transcribe 」を
Android に搭載しましたね。スマートフォンがあれば、ほぼ、リアルタイムに
周囲の音声をテキスト化してくれるということです。
音声でさえ、そうなのですから、文字の翻訳は、さらに進化を続けて行くでしょうし、
そのスピードは、私などがどんなにあがいても追いつけないスピードでしょう。
……と、やらない理由をあげてしまうのが、年を取った者の 狡猾さでしょうね。
しかも、見え見えなのに、そのやらない理由に簡単にダマされたふりをするという
二重の 狡猾さ。
あーっ!イヤだ、イヤだ。昨日、ある人と話していて、そういえば、この正月に
私は古稀を迎えてたことに気づきました。数え年なんか使わないから自身も含めて、
だ~れも気づきませんでした。
どうも、映画の話から遊離してしまいますね(これも、年を取った者の……)
のユーザーレビューの中に、
》庭の手入れをする妻の剪定バサミとガーデンシューズの色がピッタリ同じなのは
》偶然じゃない、という節がとても気に入った。
という一節があったのですが、これは、英語のセリフでは、このあと、
どちらも、 Miracle-Gro というガーデニング用品のブランドを使ってるから
というネタばらしというか、説明があるのですが、日本語字幕では
サクッと、その部分を省略してるんです。特別に深い意味があるわけじゃ
ありません。まあ、どういう形であろうと映画を楽しめればいいんですけど。
》私もきっと揃えると思う。でも、そんな実用目的、ましてや家庭内のものまで
》人目を意識する女にうんざりということなのだろう。
しかし、↑↑↑とまで、深読みできるってことは、スゴイって思いました。
この映画の面白さは、アトランティック・シティ (1980) に通じるものを
感じます。前者はイギリス人の眼を通して見たアメリカ。後者はフランス人。
でも、前者はオスカーを獲り、後者は無冠に終わってしまいました。
前者は、R18+ 指定で、後者は、R指定なしという違いもあります。
でも、特に前者は、R38+ 指定くらいだったら、もっと、高い評価を
得たんじゃないでしょうか。その R指定でも、アラフォーで、この映画の
面白さが分かるというのは、ちょっと哀しいところがあります。