Swallow (2019)

By | 2021年1月23日

日本では、今年の元日に公開されたそうですね。少なくとも、

元旦に観る映画ではありません。思いっきり、重い映画です。

この映画を

「美しくも恐ろしい、そして衝撃的なスリラーがここに誕生した。」

というキャッチコピーで宣伝するというのは、感心しませんが、

“欲望”をのみこんでゆく-。には、もっと強い違和感を感じます。

主人公が抱えた深く悲しい闇をスリラーとか “欲望” とかいう言葉に

置き換えて欲しくありません。

アメリカで「中絶禁止」州が広がっているという危機が、まさに今、

そこに起きています。それは、どういう問題なのかを深く考えるべきで

あることをこの映画は訴えています。

山口敬之のような唾棄すべき男達こそ、この映画を観るべきですが、

おそらく、彼らは、この映画を観ても気づきを得ることができないと

思います。だからこそ、産むか産まないかは、女性本人が決めなければ

ならないし、宗教や、まして州法などが決めてはならないのです。

ミフェプリストンやミソプロストールは、この映画を観て知りました。

しかし、そんな解決法ではダメだということをもっと多くの人が

知るべきです。

ところで、日本は、女性本人が決められるから良かったと思う人が

多いと思います。しかし、現在も堕胎罪は有効です。しかも、

女性本人と堕胎を直接的に手伝った者だけが罪を問われ、相手である

男性は罪に問われません。ちなみに、昨年、岡山市の病院に勤務する

医師が交際相手の同意なく中絶手術を行ったとして逮捕されましたが

刑法 第二十九章 堕胎の罪 第215条不同意堕胎および、第216条不同意

堕胎致死傷に問われたもので、バリバリに生きてます。

じゃあ、女性の意思で中絶可能な時代になっていると多くの人が

なぜ勘違いしてるかというと、優生保護法の中で人工妊娠中絶の要件に

経済的理由を認めていて、事実上、ほとんどの場合中絶を認められる

仕組みになっているからです。これって、どっかで聞いたことが

あるような……パチンコは、ギャンブルじゃないのかと言われながらも

遊戯であるという理由で認められているのと似てません?

それに、女性本人だけの意思で中絶できるわけではありません。

少なくとも、医師と配偶者の同意は必須です。しかも、レイプされた

場合でも中絶手術を受けるには相手の同意が必要としている病院が、

ほとんどです。そもそも、堕胎罪が明治以来残り、優生保護法は

女性の権利を守るためという目的ではなく、「健康な子ど もだけを、

国家に必要な数だけ産む生殖機能」を保護するという目的から

出発したもので、その前近代的な思想は今も残っていて女性を

苦しめ続けていることを我々は知ることから始めなければばりません。


実は、1972 年に人工妊娠中絶の要件から経済的理由を外す法案が

上程され、1974 年に「その胎児が重度の精神又は身体の障害の原因となる

疾病又は欠陥を有しているおそれが著しいと認められるもの」を要件として

加えるという胎児条項は外して衆議院で可決してしまいました。しかし、

参議院で、 審議未了・廃案 となったことで、からくも優生保護法の改悪を

免れたという経緯もあります。アメリカだけの話じゃありません。

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