小学校の体育館横に設置されたマンホールトイレ。開場30分前なので閑散としてます。
去年の夏にマンホールトイレのお披露目を兼ねてなのか予定された防災訓練でしたが
コロナで中止。今春にも計画されましたが緊急事態宣言で再び延期。三度目の正直で
今回は何が何でもヤルぞムードの中、開催されました。
しかし、中身は超うす味でした。私のお目当てはマンホールトイレ一点張りだったので
むしろ助かったという感じでしたけど。訓練は実際にトイレを組立てるというものでした。
しばし、訓練の様子を写した写真をどうぞ。
要するにマンホールの蓋を開け、便座を組み立ててテントで覆ってトイレを
設置するというものですが問題はマンホールトイレの運用面での不安です。
トイレを流す水源は小学校のプール水で、これは断水で各戸のトイレが
使えなくなっているというのが前提なので当然とも言えるのですが、
プールとマンホールトイレとの距離が最短でも 150m あるので、プールに
ひとり、マンホールトイレにひとりと二人常駐のカタチでの運用になります。
マンホールトイレ側にいる係が「流せ」と指示するとプール側の係がポンプの
スイッチを入れて流すということにしているというのですが、連絡は
「電話ででも」と言うのです。災害直後は安否を気遣う電話が集中するなどして
輻輳を起こし電話が使えなくなっていることは、当然想定すべきことなのに
電話以外の方法は考えていないようなので伝令でも走らせるしかないのかな。
でも、それはゆゆしき問題で、避難所では運営側のスタッフは必ず不足します。
そんな中、トイレ側、伝令、プール側と3人のスタッフが常駐しなければならず、
しかも、トイレなので24時間運用が原則です。4直3交代制シフトでも最低12人
必要ということになります。むろん、仕事の性質から専任でなくてもいいのですが
他の業務と兼任となると、それを支えるシステムが必要で、さらにシステムを
動かすための通信網や通信システムを動かすための電力が必要だったりします。
災害は、どんな季節に起こるかわからないのでスタッフの生命を守るための
暖房なり冷房をどうするのかといったところにまで話は広がります。
危機管理室の担当者にいくつか質問をしました。その中のひとつ「プールの
水でトイレを連続何日間運用できる計算なんですか?」への答えが「計算できて
いない」でした。そんなバナナでしょ?地下部分だけで、800万~1,000万円は
かかり、地上部分も合わせると 1,500万円という試算もあるマンホールトイレを
作るにあたって使い物になるかどうかは最重要事項だと言えるはずです。
古い資料ですが 平成 28 年3月に国土交通省 水管理・国土保全局 下水道部が
出した「マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン」の中に「プールの貯水量は、
25m プールの場合(幅 12m の長さ 25m の深さ 1.2m)、約 360 ㎥ の貯水量が
あるため、洗浄水として活用することが期待できる。」という記述があって、
「メーカーヒアリングによれば、し尿流下に必要なおおよその水量は、概ねマンホール
トイレ 5 基の場合 1 ㎥ /日と想定される」とも書かれているため、話 1/10 としても
水量自体には期待できると考えてよさそうです。ただ、藻などによるポンプの詰まり対策
らしきものをまったく考えていない様子だったのにはガッカリしました。
もうひとつの不安要素としては、基本的に水害の時にはマンホールトイレは使用できない
可能性が高いのは当然として、一番期待したい地震のときの使用に関して「管路に
異常がないことを確認にした上でないと使えない」という説明があったことです。
正しくは、「そのために管路の耐震化を進める」だろうと思うのですが、全体的に
不安が募ったお披露目でした。
やはり、公衆トイレのすべての大便器が中腰になったお尻の高さまでの円錐形の
ウンチで埋まっている光景を見た者にしかわからない感情なのでしょうか。