この映画の主人公 Edi の崇高さは、まぎれもなく賞賛されるべきであり、
そのことに異議を唱えるつもりはありません。でも、主人公が崇高だったら、
自動的に映画の評価が高まるというものでもないですよね。どうしようもない
クズのような主人公を描いた秀作も数多くあります。
かつて、日本にもクズ拾いという職業がありましたし、現代でも、繁華街の
夜明け前、アルミ缶を集めて換金することで生活費を稼いでいる人達が
TV画面に映し出されることがあります。貧困を描いた作品として
忘れられないのが、どですかでん (1970) ですが、その街には、貧しさと
無知と、ある種の狂気しかなくて、例えば、もののはずみで姪を
レイプし、姪は妊娠してしまったショックで恋人を刺してしまうといった
話がオムニバス形式で語られていきます。奇しくも、IMDb の評価が
Edi と同じ、7.4 となっているのは、何らかの意味があるのかも
知れません。それは、今も世界中に存在する貧困に対する感受性を
私が失いつつあるために、Edi と、その周辺の人々に対する感情移入に
失敗してしまったことからくるとまどいなのでしょうか。