河瀬作品は、その重さとか、芸術性だとか、どうしても力が入って
しまうのだけれど、この映画は、今までで、一番わかりやすいと
感じてしまいました。しかし、わかりやすく感じてしまったことに
懐疑心もあり、何か見落としたのではないか、何か思い違いを
したのではないかという不安もちょっぴりあるので、結局、
もう一度見なければならないのでしょう。でも、「芸術性」が
少なくなったとはいえ、ゼロになったわけではないので、かなりの
日数を経てからのことになりそうです。その部分は早送りすれば
いいんですけどね。たとえば、嵐の海は迫力があるんですけど
ライアンの娘のあのスゴイ海を見てしまってますから、河瀬監督、
ちょっと分が悪いですね。ヒルギだと思うけどランダムに生えて
いるんだけど、どこか整然としていて、個別の木なのにクローンの
ように相似性を持つ、おびただしい数の木が並ぶ森は、ザ・奄美って
感じなのに、俯瞰した森が奈良の森と混同するほど似て見えたり、
河瀬監督のクセなのか風景を暗く撮ってしまって、奄美に遠慮を
強いちゃったみたいで、ちょっとさみしく感じました。
それにしても、杉本哲太が、力を抜ききった芝居で登場したので
杉本哲太とは、最初わからなかったし、常田富士男に至っては
エンドロールに名前を見つけるまで気づかなかったというほど
映画の中に溶け込んでいて、それは、役者の力なのか、監督の
力なのか、しばし考え込んでしまいました。
主演の吉永淳(現・阿部純子)は、てっきり新人なのかと
思ったら、小学生でモデルとしてデビューし、映画やTVドラマで
すでに注目されていた中での起用だったのですね。でも、この作品で、
第4回サハリン国際映画祭主演女優賞、第29回高崎映画祭最優秀新人女優賞を
受賞したことがきっかけで、逆に力不足を感じ、渡米して
ニューヨーク大学演劇科で学んできたというのですから、
今後も注目したい女優です。申し添えますが、新人かと思ったのは
私としては、むしろホメ言葉で16歳のキラキラ感や、一気に
成長して同世代の男たちが子供に見えてしまう猛スピードの成長期を
すごくよく演じていたなというのと、劇中の沖縄民謡の歌声が
ネイティブ?って思えるほど良かったので、てっきり、沖縄地方の
出身だと思ってしまったのです。ナイチャーの私が評するべきところでは
ないのでしょうけど。