Chekist というのは、チェーカー勤務者や一般に国家保安機関に
勤務する者のことなんだそうです。1917年のロシア十月革命後、
官僚によるゼネラルストライキが拡大し、これを阻止するための
組織として作られたのがヴェーチェーカー(反革命・サボタージュ取締
全ロシア非常委員会)です。「ヴェー」は、「全ロシア」を意味する
らしく、ヴェーチェーカーからヴェーを取ったチェーカーは、
ヴェーチェーカーの地方支部というような意味合いになるようです。
ヴェーチェーカーは、その後、GPUやKGBに引き継がれていく
ことになる秘密警察組織で、党の監督下にあると言いながら、
実質的には、レーニン直属の組織であったと言われています。
ヴェーチェーカーは、1918年4月のモスクワのアナーキスト襲撃を
皮切りに、ニコライ皇帝一家惨殺、亡命できた者を除く皇帝の
親族や従者の全員を殺害し、帝政時代の富裕層、貴族・地主・
聖職者・軍人・コサック兵、さらに民間人も証拠も無く無制限に
逮捕し処刑していきました。
この映画の大半は、機械的に執り行われる処刑の描写です。
5人一組ずつ、収容室から呼び出され、全裸にされて銃殺され、
流れ作業で死体はトラックに積み込まれ運び出されていきます。
そうした一連の処刑→死体搬出のシーンは何度も繰り返され、特に銃殺の
シーンは、これでもかというくらい繰り返されます。観客の立場でいると、
全裸になるように命令され、壁に向かって横一列に並ばされて、銃殺される
というシーンに、徐々に慣れていくのですが、主人公のチェーカーのトップ
(机上の砂時計が落ちるほどの短時間で人々に死刑判決を下す立場でも
あり、すべての処刑に立ち会う)が無表情のまま、実は、精神的に
追い詰められていきます。
それにしても、ソ連の暗部を描く、このような映画がよくも作られたものだと
思ったのです。だって、サウルの息子を西ドイツで製作するような
ものですから。製作時期が、ペレストロイカからソ連崩壊に至った、
まさにその時期であったと知って、少しは納得したのでした。