昔、72歳だった僕 【0007】

By | 2024年10月28日

夏休みの友を制覇するには、二日もあれば楽勝と思ったが

結局、三日かかった。しかし、これに没頭したことで

家族から僕の様子が変だということに気づかれずに

済んだようだ。とはいうものの、まだ、夏休みを半分以上

残しながら夏休みの友を済ませてしまうのは充分に異常だが。

午後から県営プールに出かけた。

家にいて母親と顔をつきあわせてるのも苦痛だし

まさか近所の下級生と遊ぶわけにもいかず、何しろ暑いので

手っ取り早く涼しいところというと、プールしか思いつかなかったのだ。

入場料を払い着替えてプールに浮かんだところで

「ん?もし、同級生に声かけられたら、どうする?」

と頭をよぎったが、いい考えが浮かばない。

まあ、そのときはそのときだと、ゆら~り、ゆらゆら、ほとんど

プールの中で漂って時間を過ごした。

さすがに身体が冷えたらプールサイドの観客席に腰掛けて甲羅干し。

そんなことを繰り返して3時間ほど時間つぶしをしながら今後のことを考えた。

元の令和に戻る方法については不思議と考えなかった。

むしろ、このまま昭和で生きていきたいと思った。

だから、間違って令和に戻らずに済むようにパソコン部屋で過ごす時間を

2時間程度までとする。最長でも、こちらに来た朝の時刻を超えないことが

大切だと考えた。

だから、長時間にわたって調べものをするなど、もってのほかだ。

つい、うっかり居眠りでもしたら万事休すだ。

昭和にいると、まず、耳鳴りが止まる。夏休みの友をやってて、とにかく

頭が軽いというか回転がいいし記憶する力が段違いだということに驚かされた。

覚えようとしなくても、2時間前でも、昨日のことでも、思い返すだけで、

その場面が脳内で動画再生される感じだ。

気にもかけなかった通りすがりの人の顔も建物の形も花壇に咲いてる花まで

すべて正確に再生されていくのだ。まるで脳内防犯カメラで記憶を

呼び起こすというよりも単に必要な時刻に合わせて再生ボタンを

押しさえすれば細部まで記憶として